ル=ヴァル損な役回り
 
「貴様等、いいかげんにしろぉっ!!!!」
 毎度毎度こいつらの馬鹿さ加減にうんざりする。
「ん〜?何か聞こえたかなぁ?」
「なにかいるんですかぁ?」
「しろがいるんならそれでいいよ。」
 相変わらず空気同然に扱われている……自分で自分がふがいない気がするがそれはそれでいいのか……ってそんなわけがない。いかんな……頭を冷やしてこよう。
 部屋から外に出た私は深呼吸をした。湿気を含んだ風で余計に気分が悪くなる。
 日差しがきつい上にこの湿気だ、私はすぐに汗をかき始める。いまさら部屋にもどるのも癪だ。……ん?
 道のはずれの角地に一軒の喫茶店を見つけた。なかなかおしゃれな雰囲気だ。店名は……DDS?なんだそりゃ。ともかく入ってみるか。
 
 店内は冷房が効いており涼しかった。見ると一人の緑髪の少女がカウンターを拭いている。なんで白衣を着ているのかには突っ込みをいれない。せっかくの休憩を突っ込みに使いたくない。
「あ、いらっしゃいませぇ。」
 緑髪の少女が私に気づいて笑顔を浮かべた。
「こちらにどうぞぉ。」
 促されるままカウンターに座る。入った時は気付かなかったが奥で黒髪の少女がグラスを磨いている。それ以外に客や店員の姿は見当たらない。
「はい、メニューをどうぞ。」
 メニューを渡されざっと目を通しただけでもかなり本格的な喫茶店だと思うくらいの品数だ。……熱いからアイスティーにしよう。
「アイスティーを一つ。」
「……本気ですか?」
 何を言い出すんだこの小娘は。
「本気です。」
「ふぁいなるあんさー?」
「くどい。」
「ふぇぇぇ。」
「その泣き方やめてくれ。」
 緑髪の少女はしぶしぶ裏へ引っこんでいった。それと入れ替わりで橙色の少女がでてきた。
「えっと、アイスティーだったな。少し待ってくれ。」
 なんだか上から目線だな。
「ねぇ、おじさん。」
 おじさん?歳を数えなくなって久しいが、さすがにその言葉にはズキッとくるものがある。見ると黒髪の少女がこちらを見ながらにやにやしている。
 私は確か8万と26歳だった気が……まぁそんなことはどうでもいい。
「なんですか、お嬢さん?」
 ここは下手に出るのが得策だな。これ以上変な扱いをされるのはあの対談部屋だけで十分だ。
 黒髪の少女が私の横の席に座る。いちいち目を見て話すのはやめてくれ、なんだか心を見透かされそうで嫌な気分になる。
「なんかわけあり?疲れた感じがするし。」
「まぁ……いろいろとね。」
「へぇ〜。そんで気晴らしにここへ来たってわけか。うんうん、わかるよ。」
 なにがわかるって言うんだ。
「空気扱いされて、いじられキャラ扱いされて、挙句にコーナーまでつぶされたんだ……疲れるのも当然だ。」
 黒髪の少女は聞いてるのか聞いていないのか、スティックシュガーで遊んでいる。
「人の話……聞いてたか?」
「ん、聞いてた聞いてた。大変だねぇ。」
 今度は髪の毛をいじり始めた……だめだこいつ。
「ほら、できたぞ客。」
 目の前にアイスティーが置かれた。いい具合に湯気が出ていていい香りがする……っておい。
「アイスっていったんだが?」
 落ち着けル=ヴァル。ここで激怒したらあいつらと同じ目に会いそうな気がする。こらえろこらえろ……。
「人の行動には最後まで気を配るものだぞ。ほらアイス。」
 バニラアイスが皿に盛られて出てきた。なぁるほどアイス・ティーね。…なぁんか腑に落ちない。
「ねぇおじさん。アイス頂戴?」
 黒髪の少女が腕にしがみついてねだり始める。お前はキャバ嬢か。
「なぜお前にやらねばならん!私が注文したものだし、お前は店員だろ!?」
「私の暗示が効かない?色仕掛けも効かないなんて……なにもの?」
「まがりなりにも神だし、女に興味はない。」
「……ゲイ?」
「なっ!!!???」
「まぁ、私も男に興味無いしぃ。おじさんイケる口だね?」
「私はゲイではない!それとおじさんでもない。ま、歳はあれだが…
「照れるな照れるな!ここは私のおごりにしたげる。それとオレンジたんアイス頂戴。」
「バイト代から引いておくからな。」
 黒髪の少女は嬉々としてアイスを食べ始める。……仕方がないので私もアイスを食べる。……くぅっ!眉間がっ!
「あの……お冷をどうぞ。」
 いつの間にか後ろを取られていたことに若干敗北感を覚えたが、まぁいい。そこには青紫の髪をした見るからに内気そうな少女が立っていた。
「お冷……。」
「あじたんおそいよ何やってたの?」
 隣でアイスを食べていた少女が椅子から降りて内気そうな少女に抱きついた。
「ひぇぇぇぇぇ!?」
 その拍子にお盆の上のお冷が私にかかった。びしょ濡れだ。
「…………。」
 だめだ、切れるなル=ヴァル。お前は神なんだろぅ!?
「す、すいませっ……ん。」
 黒髪の少女は内気な少女にまだ抱きついている。おまけに耳まで齧っている。
(わかりにくいので会話文の前にイニシャルつけます。By管理人)
白「ほれは、はつはの!ほっほほははふけなふぁい!(これは罰なの!とっとと片付けなさい!)」
ル「あ、いや、気にしないで結構です。」
紫「だめです……私のミスですから。」
白「そうだよ。あじたんのせいだよ。罰としてあとで私の部屋に来るように。」
オ「お前に何の権限があるんだ。この店は主任のものだろ?」
S「呼んだぁ?」
白「いいの!あじたんは私のものなんだから!」
紫「ものじゃないです……。」
オ「ともかくとっとと拭け。」
S「あの、私は?」
白「sushiたんは引っこんでていいよ。」
S「そんな……せっかく出てきたのに。」
オ「というか主任、裏で何やってたんだ?」
S「おせんべえ食べてた。」
白「あ、私も食べたい。」
S「全部食べちゃった♪」
紫「もしかして紙袋に入ってたやつですか?」
S「うん。」
紫「それ、私が買ってきたのに……。」
オ「せんべいなら私のをやるから落ち込むな。」
白「落ち込んだあじたんも可愛いなぁ……。」
オ「やめろ、この百合虫。客がいるんだぞ?」
白「見せつけてやりゃあいいの!むぎゅう。」
紫「ふぁぁぁ!!?も、揉まないでください!!!」
S「はわわわわわ。」
 
「やかましぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
 どごぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんんっっっっっ!!!!!!!!!(効果音)
 もう限界だ。この騒がしい連中に説教を垂れてやる。日頃の鬱憤を晴らしてやる。
「貴様ら何なんだ?接客態度は悪いし、客にタメ語で話しかけるし、挙句の果てにびしょ濡れにさせる?ふざけろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
 店員四人に正座をさせる。黒髪の少女はいかにもつまらなさそうに、緑髪の少女はぼけぇっとしながら、橙色の少女は真面目に、青紫の少女は泣きながら、話を聞いている。
ル「おまえら、話聞く気あるのか?」
白「ない。」
S「ふぇ?」
オ「それなりに。」
紫「ぐすっ……。」
白「あぁ〜おじさん、あじたんを泣かせた!」
ル「なっ!?」
白「あじたん大丈夫?怖いおじさんはオレンジたんがやっつけてくれるよ?」
オ「なんで私なんだよ?」
S「ふぁ……、ぬむい……。」
オ「おい主任寝るな!」
S「むにゅむにゅ……オレンジさん柔らかいねぇ。」
オ「寄りかかるな!ぐりぐりするな!」
白「私もやるぅ〜。」
紫「ちょっ!スカートの中に顔を突っ込もうとしないでください!」
オ「主任起きろ!こいつを何とかしろ!」
ル「私かっ!?」
S「zzz。」
ル「なぁ……あんた苦労しているな。」
オ「私のことか?」
 私は橙色の少女に同じ匂いを感じた。
「客もそんな役回りなのか?」
「あぁ、空気とか言われる。」
「あんた……名前は?」
「ル=ヴァル。それでいいさ。」
「私の名前は……。」
「あ、オレンジさんおはよう。」
 名前があるだけ私はましなのかもしれないと、目の前で緑髪の少女にしがみつかれているオレンジを見ながら思った。
 
 紅茶も飲み終わり帰ろうとドアに手をかけた時だ。
「おじさん。お金!」
「金取るのかよ。あれだけさんざんやらかしといて。おごるんじゃなかったのか?」
「気が変わったの!はらわないと……はい。」(↓反転させてみ)
「なぁっ!?何で貴様がそんなことできるんだ。っていうか元に戻せ!!私は帰る!!!金も払うから見逃せ!!!」
「300ガルドになります。」
「そんな通貨は知らん。」
「じゃ、300ギル。」
「どこのFFだ。」
「じゃ、300ドル。」
「ふざけろ。」
「もう!300円!」
「ロイドならある。」
「じゃあそれでいいよ。」
「じゃあってなんなんだよ?」
 ポケットから小銭を出して手渡す。
「まいど!またきてねおじさん。」
 二度と来るか。
 
日差しは容赦なく私を照りつける。……しょうがない、もどるか。私の居場所はやっぱりあそこなんだろうな。
重たいドアをあけて収録現場に戻った。
「ん?さっきドアが開いたような?」
「きのせいだよ、しろ。(ぎゅ〜)」
「はわ〜。」
「うんうん、二人ともかわいいね。食べちゃおうかな?」
 所詮……私は空気さ。でも、空気がないとみんな困るだろう?にしても変な喫茶店だった。二度と行きたくないな。
 ただ、アイスはうまかった。
 
≪執筆後記≫
 まっさか白い旅人さんが2000踏んだとは思わなんです。ってわけでル=ヴァル小説、いかがでしたか?ル=ヴァルって誰さ?って方は白い旅人さんのサイトの対談コーナーへどうぞ!ル以外の登場人物はうちの看板四人とセリフのみの白&黒の少女、謎の美少年です。なるべく本家の対談のイメージでやりましたが、正直よくわかんないです。
よくやった!!って思う方がいたら拍手を押していただけると幸い至極です。
 キャラ小説ってのは書きやすいし好きですね!看板娘の話も書きたいもんです。
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